大阪地方裁判所 昭和47年(わ)3930号 判決
一、本店所在地
大坂府八尾市久宝寺六丁目六番六一号
商号
熊野合成株式会社
代表者氏名
那須郷磨
二、本籍
和歌山県田辺市中万呂六三四番地
住居
八尾市大字大窪九三三番地の二
職業
熊野合成株式会社代表取締役
氏名
那須郷磨
生年月日
大正四年一一月一七日生
右両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官忠海弘一出席して審理し、次のように判決する。
主文
被告人熊野合成株式会社を罰金五〇〇万円に、被告人那須郷磨を徴役六月に処する。
被告人那須郷磨に対し、この裁判確定の日から二年間右徴役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人熊野合成株式会社は大坂府八尾市久宝寺六丁目六番六一号に本店をおきプラスチック全般の成型加工および販売業を営むもの、被告人那須郷磨は同会社の代表取締役としてその業務全般を統轄しているものであるが、被告人那須郷磨は同会社の業務に関し法人税を免れようと企て、
第一、昭和四三年一〇月一日から同四四年九月三〇日までの事業年度における同社の所得金額が四三、五五〇、四六〇円でこれに対する法人税額が一四、八五八、〇〇〇円であるのに、公表経理上売上げの一部を除外し架空の仕入れおよび経費を計上するなどの行為により右所得金額中三一、九〇五、七五〇円を秘匿したうえ、同四四年一一月三〇日同市本町所在八尾税務署において同税務署長に対し右事業年度の所得金額が一一、六四四、七一〇円でこれに対する法人税額が三、六九五、四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により法人税一一、一六二、六〇〇円を免れた、
第二、昭和四四年一〇月一日から同四五年九月三〇日までの事業年度における同社の所得金額が二七、五五〇、一六八円でこれに対する法人税額が九、六四九、九〇〇円であるのに、公表経理上売上げの一部を除外し架空の経費を計上するなどの行為により右所得金額中一五、五四七、八四九円を秘匿したうえ、同四五年一一月三〇日前記八尾税務署において同税務署長に対し右事業年度の所得金額が一二、〇〇二、三一九円でこれに対する法人税額が三、九四二、八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により法人税五、七〇七、一〇〇円を免れた、
第三、昭和四五年一〇月一日から同四六年九月三〇日までの事業年度における同社の所得金額が四〇、八五一、一八二円でこれに対する法人税額が一四、四三二、二〇〇円であるのに、公表経理上売上げの一部を除外しあるいは翌事業年度に繰延べ架空の仕入れおよび経費を計上しかつ期末たな卸の一部を除外するなどの行為により右所得金額中二六、三二六、一二六円を秘匿したうえ、同四六年一一月三〇日前記八尾税務署において同税務署長に対し右事業年度の所得金額が一四、五二五、〇五六円でこれに対する法人税額が四、七六七、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により法人税九、六六四、七〇〇円を免れた
ものである。
(証拠の標目)
判示第一の事実について、
一、那須絹子作成の昭和四七年六月八日付確認書および同人の収税官吏に対する同年六月二一日付、同年七月五日付の各質問てん末書
判示第一、第二の事実について
一、那須絹子の収税官吏に対する昭和四七年六月二三日付、同月二七日付の各質問てん末書
判示第一、第三の各事実について
一、那須絹子作成の昭和四七年六月六日付確認書
判示第二、第三の事実について
一、那須絹子の収税官吏に対する昭和四七年一〇月七日付の質問てん末書
判示第三の事実について
一、水上幸一、笠井正男の収税官吏に対する質問てん末書
判示全事実について
一、登記官作成の商業登記簿謄本
一、熊野合成株式会社の定款
一、八尾税務署長作成の証明書三通
一、那須絹子作成の昭和四七年六月三日付確認書二通
一、那須絹子(昭和四七年五月一〇日付、同年六月二六日付、同年九月一一日付)、前田雪子、佐々木啓子、石崎利勝の収税官吏に対する各質問てん末書
一、国税査察官(収税官吏)作成の総勘定元帳および銀行取引関係の調査書(請求番号18・19のもの)
一、被告人作成の確認書七通
一、被告人の収税官吏に対する質問てん末書一九通および検察官に対する供述調書
(法令の適用)
被告人両名の判示所為はいずれも法人税法一五九条一項、七四条一項二号(法人の処罰につき、なお一六四条一項)に該当するところ、被告人熊野合成株式会社につき、以上の罪は刑法四五条前段の併合罪なので同法四八条二項により所定罰金額を合算した金額の範囲内で被告人熊野合成株式会社を罰金五〇〇万円に処し、また被告人那須郷磨につき、所定刑中いずれも徴役刑を選択し、以上の罪は同法四五条前段の併合罪なので同法四七条、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人那須郷磨を徴役六月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右徴役刑の執行を猶予する。
よって、主文のように判決する。
(裁判官 砂山一郎)